2014年10月15日水曜日
『セブン』 乾くるみ著
『セブン』 乾くるみ著
「7」を題材にした7つの物語である。
どれもこれも予想のつかない展開で、且かつ、結末は裏切られる。その裏切られ方も、こうくるか、まさかそんな、と、毎回唸うならされた。乾くるみ
そして思ったのは「乾さんの頭の中はいったいどのような構造になっているのだろう」と、いうことだった。
巻末の著者略歴を見ると、理学部数学科出身とのこと。ようやく納得した。文学と数学が融合している。つまり、感覚や感性をつかさどる右脳だけでなく、論理的な捉え方をするという左脳も刺激されまくる小説なのである。乾くるみ
特に「ラッキーセブン」「ユニーク・ゲーム」は、愉たのしむだけでは済まされない。ゲームが登場することもあって、試されるような、いや戦いを挑まれるような感覚に陥る。「TLP49」は、頭のバランスがうまく取れず、前のめりになりながら読んだ。「殺人テレパス七対子チートイツ」は、油断すると事件から取り残されてしまいそうになる。「小諸―新鶴343キロの殺意」「一男去って……」は、実に皮肉な展開で、怖い設定なのにどこか可笑おかしみもある。
私が特に心惹ひかれたのは「木曜の女」である。すっかり乾さんの術中にはまってしまった。これはもう粗筋を書くのも危険な作品なので、読んでいただくしかないのだが、まさに小説にしかできない格別な一編となっている。
乾さんは『イニシエーション・ラブ』で大ブレイク中の作家である。1998年に『Jの神話』でメフィスト賞を受賞された。この賞は他の新人賞とはまったく違った方式を取っている。ジャンルも応募期間も下読みもない。ついでに言えば賞金もない。編集者が直じかに読んでデビューを決めるのである。なるほど。一筋縄で行かない作家が誕生するのも頷うなずける。
まったりと小説に浸りたい、というよりも、いっそ翻弄されたい、という方に特にお勧めの一冊である。
◇いぬい・くるみ=1963年、静岡県生まれ。静岡大理学部卒。著書に『リピート』『六つの手掛り』など。乾くるみ
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