2014年10月31日金曜日
松坂大輔、8年目の夏 「何が起きても動じない」
松坂大輔、8年目の夏 「何が起きても動じない」
大リーグ8年目の今季、松坂大輔(33)はメッツ傘下の3A・ラスベガスで開幕を迎えた。4月16日にメジャーへ昇格すると、中継ぎ、ロングリリーフ、抑えと様々な状況で結果を出してきた。今は先発ローテーションの一角に落ち着いたが、安泰とはいえない。「何でもできる」という高い評価は、いつどんな役割を振られるか分からないことでもあるからだ。松坂大輔
■開幕から3週間、ブルペン要員で昇格
「もう、イレギュラーなことが起きても引きずらなくなった。この2年で強くなった」。松坂は笑いながら話す。
開幕直前まで先発5番手争いをし、結果を残しながらもマイナー行きを通告された。さすがにショックを隠せなかったが、開幕から3週間もたたぬうちに昇格した。ただ、プロ入り後ずっと先発で投げてきたのに、ブルペン要員である。5月中旬、先発のジーが故障者リスト入りしても、3Aからメジャー初昇格させた2投手がまず試された。うち1人が3Aに戻って、やっと出番がきた。
4月のメッツはナ・リーグ東地区で3~4位あたりをウロウロしていた。6月末現在、首位から8ゲーム差の4位と低迷する。チーム防御率はリーグの真ん中前後だが、打率は下から3番目。プレーオフ進出を諦めるのはまだ早いものの、士気の上がる雰囲気でもない。
近年、6月ごろのメッツはこれがお決まりのパターンだ。その6月、松坂は5度先発して1勝2敗。食中毒のような症状が出て1回で降板した日もあったが、2日後には救援をこなした。クオリティースタート(先発で6回以上投げて自責点3以下)は1度。月間防御率4.18は、今季通算のリーグ防御率ランキングでは40位前後に相当する。
■先を見据え投球スタイル変更に挑戦
2011年に右肘靱帯の再建手術を受け、復帰した12年は1勝7敗、防御率8.28に終わった。レッドソックスからフリーエージェントになり、13年はインディアンス傘下の3Aで8月中旬まで過ごした。そのころから直球主体ではなく、緩い球や動く球を多用する投球に取り組んでいる。松坂大輔
「これから先、何年やるか分からないけれど、何年もやるために今、少しずつ中身を変えていっているところ」と松坂。今季は「すぐ昇格するかも」と言われたので、3Aでじっくり取り組む余裕がなかったという。
長年のスタイルを変えるのは容易ではない。以前より投球リズムが良くなり、6回を100球程度のペースで投げてはいるが、四球で走者を背負い、投球を難しくする癖は残る。6月26日のパイレーツ戦でも、先頭の8番打者への四球から無安打で先制された。6月までに53回投げ、35四球を与えている。
■「僕の投球は昔から変わらずアバウト」
「僕は走者を出しても(本塁に)かえさなければいいと思っている。球数は少なくないと長い回を投げさせてもらえないから、減らそうとしているけれど」
長打を警戒して弱腰になるというより、際どく攻めすぎて四球を出してしまうケースはある。メッツのコリンズ監督はプロ野球オリックスの監督経験もあり、日本の野球に理解がある方だ。「中6日で先発する日本は球数をかけて伏線を張り、丁寧に打者と対峙できる。米国は中4日の登板で100球をメドに交代する。どんどんストライクを投げる投球になる」と指摘する。
そもそも効率的に投げないと体がもたない。そのため制球力が大切になるのだが、松坂の考えはユニークだ。「僕はアバウト。ここぞという場面で、ここという場所にボールが行くためのリリースポイントが安定するように意識する。上原さん(レッドソックス)は丁寧にコーナーへ制球する技術があるけれど、僕は基本的にタイミングをずらす投球。昔から変わらない」
今の松坂の投球を見ていて、ヒヤヒヤする人の方が多いかもしれない。かといって、20代の頃の剛速球に陰りが見えたので小器用に軟投派に変身するというのも松坂の場合、「らしくなくなるというか、何か違う気がする」とある日本人大リーガーはいう。
■勝つためだけでなく、何かのためにも
「大輔は背負っているものが人と違う。内に秘めるものがある。いい味になってきたね。ただ投げている人じゃないから。あいつのことを好きな人はそういう秘めたものが好きなんだろうし。僕は応援したい」。5月中旬、「サブウエーシリーズ」で投げた松坂を見て、ヤンキースのイチローが話した言葉を思い出した。
ただ勝つためだけではない、他の何かのためにも投げる。16年前の甲子園で日本中を興奮させた横浜高時代からの松坂を知る日本のファンには、この辺の機微も分かろう。しかし、米国人はどうだろうか?
「最後に投げる人が抑え」とコリンズ監督が言っていた時期もあるほど、迷走するメッツの投手起用。ジョーカーの役割となって働いたのが松坂だった。早々と崩れた先発の後のロングリリーフ、終盤の重要な1イニング、抑え、ローテーションの谷間の穴埋め先発……。5月は11登板で1回を超えて投げたのが7度。6月4日の先発が決まっていたのに5月30、31日には連投もした(2夜続けて延長14回になった事情があるとはいえ)。松坂大輔
■「結果出さないと次につながらない」
「文句を言わず、どんな役割もこなし、若手の見本になる」とコリンズ監督。悪く言えば、都合良く使われているのだが、「今の僕の立場を考えたら……。何であれ結果を出さないと次につながらない」。松坂は拍子抜けするほど、サラッと答える。もともと喜怒哀楽が表に出やすい人だったが、今季は元気のない日はあっても、気持ちの安定を失うことはないようだ。
「時間がたつにつれて(立場に)慣れたというか、自分で自分を理解させたというか、納得させたというか……。(いろいろ考えて)余計なストレスを出したくなかったから」
松坂のような立場の選手は少なくない。大型の長期契約を結べるのはチームの核になる選手だけ。そのとき自分を必要とする球団と単年契約し、次々とチームを渡り歩く選手なしには成り立たないのが大リーグだ。同じような立場からワールドシリーズ王者の守護神に上り詰めたのが上原だが、今季はプレーオフ進出も無理と見たレッドソックスが高く売るのでは?と噂される。
■先発ジーが復帰へ、松坂の今後は?
メッツでは7月早々、ジーが戻って先発陣の1人がブルペンに回る。松坂の可能性が大きい。一方、弱点の外野を補強するため、他球団から引きの多いジーをトレード要員にするともいわれる。先発も中継ぎもこなし、年俸は150万ドルと割安の松坂を狙う球団があっても不思議でない。
いろんな情報が駆け巡る夏――。「ぜんぜん気にしない。考えたってしょうがないじゃないですか。イライラするだけですよ」。松坂はこう言い残し、軽やかにグラウンドに出て行った。松坂大輔
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