2014年10月12日日曜日
スコットランド独立問題 沖縄に波及はあり得る? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
スコットランド独立問題 沖縄に波及はあり得る? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
スコットランドがイギリス(大ブリテンおよび北部アイルランド連合王国)から独立する、つまり連合から離脱するのに賛成か反対かの住民投票が2014年9月18日に行われ、反対派が多数を占めました。沖縄独立
住民投票は否決こそされたものの、欧州の他地域の独立運動に影響を与え、日本の沖縄独立論と絡めて論じられることもあります。今回のスコットランドの独立問題と沖縄の独立論には、どのような共通点と違いがあるのでしょうか。
英国政府へのうっ積した不満
独立というと民族や宗教の違いや、宗主国への反発から起きる例がしばしばみられました。多くは血なまぐさい闘争を経ての革命的結果です。しかしスコットランドは合法的かつ平和な環境で是非を問うたのが特長です。
そもそもイングランド連合王国(イングランド・ウェールズ連合王国)とは別国家であったスコットランドが連合に加わった(大ブリテン連合王国)のは1707年。イングランド連合王国から経済的に締め上げられ統合した面が強くあります。とはいえ300年以上昔の話。今回の件も「過去に独立していた」を懐かしむ思いがスコットランド人になかったとはいいませんが、直接の要因となったのが60年代に見つかった北海油田・ガス田の存在と1979年から90年まで首相を務めた保守党のサッチャー政権による政策です。
北海油田・ガス田と総称される地域の多くがスコットランドに近接していて、スコットランド人からすれば不当に収奪されているとの思いがありました。加えてサッチャー政権が石炭鉱山や造船といったグラスゴーを中心に発展してきた産業を合理化し、多くの失業者を出し、一時期人口減少などで都市がさびれていきました。
1997年、スコットランドを金城湯池とする労働党が保守党から政権を奪還し、票田の不満を少しでも抑えようとスコットランド自治政府の発足を認め、2011年の自治政府議会選挙で住民投票を公約に掲げたスコットランド国民党が勝利して具体化していきます。12年に、14年末までの住民投票をする合意がなされ、自治議会とイギリス政府が翌年法制化しました。2010年に保守党が政権を再奪還したものの、住民投票そのものを拒否すればより反発を強めるとの配慮が働いたようです。沖縄独立
独立賛成派は次のような政策を掲げました
・北海油田・ガス田の正当な取り分を確保して福祉政策などに充てる
・スコットランドに置かれている英国唯一の核兵器(核弾頭ミサイル付き原子力潜水艦の母港)撤廃
想定外の賛成盛り上がりに慌てた英国政府は「通貨(ポンド)を使わせない」というムチと自治権のさらなる拡大というアメで必死に食い止め何とか連合王国残留へとこぎ着けたようです。
さて、このような動きを沖縄独立に絡めて論じる人もいます。結論からいうとそうはならないでしょう。そもそも本気で日本から独立しようと考える沖縄県人がごくわずかだからです。しかし教訓を得られないかというとそうでもありません。沖縄が主に米軍基地負担で強い不満を持っているのが事実だからです。スコットランドにおける原潜基地負担と通じるところがあります。「かつて別の国だった」という過去も共通しています。
沖縄は国土の0.6%で人口の1%。そこに米軍基地の74%(面積比)が集中しています。県民からすればどう考えてもいびつな構造で何とかしてほしいとの要求がかねがねあります。ここから一義的に「日本政府が米政府と交渉して改善してほしい」と願うも一向にその気配がなく「生活に直結する問題で県民に自己決定権が全くないのはおかしい」という声が起きているのです。
この自己決定権に関して年末の沖縄県知事選挙で新たな動きが見られます。米海兵隊普天間基地の辺野古移設反対を唱える翁長雄志那覇市長と容認の仲井眞弘多知事が激突する構図になったからです。これまでの知事選は自民党(今は政権与党の公明党を含む)が推薦する候補と非自民が押す基地反対系候補が主に戦ってきました。しかし翁長氏の経歴はバリバリの自民党。所属どうこうに関係なく沖縄の声を代表しようという戦法です。むろん「戦法」ですから背景にはいろいろあるでしょう。それでも中央を大慌てさせているという一点でスコットランドのそれと一脈通じるものがあります。沖縄独立
人口の1%を占めるに過ぎない沖縄の声は1%しか届きません。それは10%であったスコットランドにも似通います。しかしその割には背負わされている負担が大きすぎるという反発が共通します。沖縄には米軍基地が、スコットランドはエネルギー分配や核兵器問題。さらに国土面積の3割という武器もありました。
沖縄県に属する尖閣諸島の問題で中国が海洋での脅威になっているという事実を県民が知らないはずがなく、直近の県の意識調査で、県民の89%が中国に「良くない印象」「どちらかといえば良くない印象」を持っているとわかります。といって「だから74%に基地負担を黙って受け入れろ」というのは虫が良すぎやしないか。もっと努力できる余地があるはずというのは大方の意見でしょう。「1%」でなく「74%」をどうとらえるかを放っておくと、今はまだ誤差程度の沖縄独立論が急速に高まる可能性がゼロではありません。それこそ中国の思うつぼです。
なおスコットランド独立問題は、似たような歴史を持つ欧州各地へと影響を広げています。スペインのカタルーニャ州(州都はサッカーで有名なバルセロナ)はスペイン継承戦争に1714年に敗れて自治権を喪失、その後ある程度復活したもののスペイン内戦(ピカソの「ゲルニカ」の着想ともされる)に端を発したフランコ独裁体制で再び弾圧され、今でも独立のための住民投票を目指しています。同じくバスク自治州も民族が異なりながらフランコ独裁で弾圧を受け、独立の声が後を絶ちません。サッカー男子日本代表のアギーレ監督はバスク人をルーツとしています。
何かとまとまらないのが国風ともいえるイタリアでは工業が発展し比較的豊かな北部が「南部は怠慢だ」という感情的いきさつもあって90年代に「北部同盟」という地域政党を創設。相当な勢力があり、連邦制など自治権の拡大などを訴えています。もっとも主張の幅が大きく(やはりまとまらない)変幻自在のベルルスコーニ元首相あたりに翻弄される場面も。
ベルギーはフランス領から脱してオランダと連合王国を組んだ後に19世紀、独立しました。オランダ語圏の北部とフランス語圏の南部が連邦し、裕福な北部に不満が強く約1年半も正式に首相が決まらないという空白期を作ってしまいました。ちょうど2010年債務危機で欧州に激震が走り、ベルギーを含むユーロ圏が必死になって防衛策を講じている中、「みな大変なのにベルギーは何やっているんだ」と批判され、王様まで事実上関与する形で2011年にやっと現首相が選ばれています。沖縄独立
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