2014年10月15日水曜日
原発再稼動問題をはじめとする日本のエネルギー政策を、どう立て直すか?
原発再稼動問題をはじめとする日本のエネルギー政策を、どう立て直すか?
先週(3日)の内閣改造で誕生した小渕優子経済産業大臣の記者会見などでの何の変哲もない言動を大袈裟に報じる新聞記事が目立っている。小渕優子
本人が「地元と相談」と即断を避けたところ「原発再稼働へ地元行脚‐小渕経産相、川内など検討」と朝刊の経済面アタマ記事で報じた日本経済新聞や、ネット版のMSN産経ニュースで経済産業省への登庁を「重責に緊張感の登庁、足早に執務室へ」と映画祭に現れた大物女優のものと間違うような雑感記事に仕立てた産経新聞の記事が、それである。
こうした報道をみていると、「初の女性総理候補」という評判に冷静さを失い、小渕経産相を大きく扱おうという意図の存在を感じずにはいられない。こうした記事がきっかけとなって国民的な人気を得た政治家が過去にいたことは否定しないが、実力が追い付く前に内閣総理大臣に就任するような事態になれば、それは国民だけでなく本人にとっても不幸だろう。小渕優子
政治家にとって大切なのは、実績を積み、実力を付けること。できることならば、小渕大臣には、福島第一原子力発電所の爆発事故以来、混迷を極める電力・原発政策の再構築などで汗をかき、その功績をもって総理候補に名乗りを挙げてほしいものである。
小渕大臣は1973年12月に、故小渕恵三首相の次女として生まれた。東京放送(TBS)、父恵三氏の総理時代の私設秘書を経て、2000年の衆議院議員選挙に群馬5区から出て初当選。すでに当選5回を数えるほか、麻生内閣で少子化対策などを担当する内閣府特命担当大臣として初入閣を果たしており、今度が2度目の入閣だ。
筆者は、自民党副総裁時代の故・恵三首相に呼ばれ、携帯電話会社間の競争促進策について逆取材を受けた経験があるが、すでに「郵政族のドン」と呼ばれていた大物政治家とは思えない謙虚さと誠実さ、そして親しみ易さが衝撃的だった。
小渕大臣は、その父親譲りの性格もあって支持者が多く、「最初の女性宰相候補の最右翼」の呼び声が高い人物である。
実際、「財務省が財務副大臣時代の小渕氏に派遣した秘書官が小渕氏に心酔、財務官僚の立場を忘れてしまって、同省幹部がおおいに慌てた」とか、今回、「『将来の総理候補をお預かりしたのだから、決して傷はつけられない』と、経済産業省の幹部官僚たちが、小渕大臣の初記者会見の想定問答作りにいつになく固くなっていた」といった噂も聞こえてくるほどだ。
しかも、女性閣僚の登用は、今回の内閣改造の目玉のひとつだ。勢い、新聞、テレビは、発言内容のニュースバリューがそれほど大きなものではなくても、小渕大臣の動静ならば大きく取り上げようとした。
冒頭で紹介した記事のほか、前任の茂木敏充経産相と同じ内容の答弁を繰り返しただけでも、その話がまるで初出のニュースであるかのように位置づけて報じる新聞も目立った。
そんな中で「勇み足」と言われても仕方のない報道をしたのが、前述の日本経済新聞だ。3日夜の初閣議後の記者会見で、九州電力の川内原発の再稼働問題に関連し、地元の理解を得るために現地入りするかとの質問を受けて、当の小渕大臣は、「地元のお考えもあるでしょうから、地元とよく相談をしながら、今後についても適切に対応していきたいと考えています」と慎重に回答した。
それにもかかわらず、日本経済新聞は翌日の朝刊で、「原発再稼働へ地元行脚―小渕経産相、川内など検討 政府の関与強化」と、大上段の見出しを付けて報じたのだ。小渕優子
ちょっと冷静に考えれば、根強い反発のある問題について、打開のために地元に行くと言えば、訪問阻止を合言葉に地元の反対派が猛反発しかねないことぐらいわかるはず。
それゆえ、改造前の600日あまりにわたって、安倍晋三首相はもちろん、甘利明経済・財政担当大臣、茂木敏充前経済産業大臣らはそうした趣旨で原発が立地する県を一度も訪問していない。そうした事実を顧みずに、川内原発入りを煽るような記事を掲載したのは、新聞として稚拙としか言いようがない。
顛末を見ても、日経の判断ミスは明らかだ。小渕大臣自身が、記事掲載の翌日にあたる5日の記者会見で、川内原発ではなくて、東京電力福島第一原子力発電所を7日に視察すると発表したからだ。その際、あえて「(事故)対策の進捗状況をしっかり見て、今後の対策に生かしていきたい」と述べ、当分の間、再稼働の促進を狙って原発視察をする可能性が薄いことも示唆したという。
ただ、小渕大臣自身が、「父・恵三氏のような大政治家に育ってほしい」と期待する多くの支持者の声に応えていくつもりならば、原発・電力政策の建て直しは格好のテーマである。小渕優子
というのは、安倍政権は発足以来、世論調査の内閣支持率に拘泥するあまり、この分野の不都合な真実をきちんと国民に語りかけようとしないばかりか、調整の難しい問題や国民から反発を受けそうな問題はすべて封印して、原発再稼働という重責をひとり原子力規制委員会に背負わせる姿勢を採ってきたからだ。
例をあげれば、パンク寸前だった電力の需給の問題と、それを回避するための節電の問題がある。西日本を中心に各地を襲った豪雨によって気温がそれほど上がらなかったため、結果として現実化が避けられたものの、今夏は予期せぬ大停電が多発してもおかしくなかった。
電力パンクの危機を避けるには、昨年や1昨年以上に痛みを伴う節電が必要だったのに、政府はその必要性を、国民と経済界に昨年や1昨年ほど訴えようとせず、素知らぬ顔を決め込んでいた。アベノミクスによる経済の好調という演出を続けるのが困難になりかねないという政治的判断が優先されたからである。
電力不足の原因には、東日本大震災以来、初めて原発がひとつも稼働しない夏を迎えたことと、かつて原発シフトを進めようとした結果、火力発電所の建て替えを怠り、老朽化が急ピッチで進んでしまった問題がある。
ところが、マスメディアの世論調査をみると、このところ「電力は足りている」と誤解し、原発の再稼働に反対する声が増加する傾向がある。正確な情報がないのだから、正確な判断はできないが、こうした世論は政府による「不都合な真実」隠しの所産に他ならない。
一方で、日銀が取り組んでいる異次元の金融緩和が招いた円安によって、火力発電に必要な化石燃料のコストがウナギ登りとなっていることも無視できない。以前の想定を上回る電気料金の大幅引き上げが必要になっているにもかかわらず、政府は、東京電力を除く電力各社が求めた値上げの幅をカットしてきた。
しかし、それも限界に近づいている。経営破綻の危機に直面した北海道電力の再値上げ申請は、その証左である。今後、同様のケースが各地で頻発し、我々のくらしと経済を直撃するリスクが高まっているのに、政府は今なお「不都合な真実」を衆知して来なかった。
加えて、政府は、おカネでは電気が確保できなくなるリスクの存在もきちんと開示していない。内戦やテロという緊迫した状況が続くウクライナや中東の情勢次第では、いくらおカネを出しても化石燃料が確保できなくなる事態にいつ陥ってもおかしくはない。
今まず政府に求められているのは、こうしたいくつもの不都合な真実の開示と、それらを乗り切るための選択肢と選択肢ごとの詳細なコストの開示である。
加えて、原子力規制委員会が進める「新規制基準への適合審査」は、単なる揺れや津波対策の強化に過ぎないことを正直に認めなければならない。新基準に適合しても、原子力事故が起きる可能性が残ることを認めたうえで、万一の時は住民が安全に避難できるよう、自治体任せにしている避難計画作りに、国も責任を持つ必要があるのだ。小渕優子
もちろん、事故で泣き寝入りする人が出ないよう、欠陥だらけの原子力損害賠償制度の抜本改革も必要だ。さらに、使用済み燃料の処分策を確立する取り組みも先送りし続けてよい問題ではないのである。
すでに昨年来、自力での資金調達が困難になり、事実上の経営破たん状態に陥っている日本原子力発電の資本主義のルールに沿った破たん処理と、それだけでは担い手がいなくなってしまう同社保有の敦賀、東海第2の各原発の廃炉処理策の構築も喫緊の課題である。来年3月に到来する年度末の決算で、昨年や一昨年のようなパッチワークを繰り返すことは企業会計制度全体の信頼を損なう行為である。
もちろん、問題は原発にとどまらない。国家的な節電の推進のめどを立てて、それを前提に必要な電力の総量のメドをはじき出したうえで、必要な電力を賄うために、まず旧式の火力発電所の廃棄と高効率施設への建て替えを進めることは、最低限の原発の再稼働と並ぶ喫緊の課題である。
縷々述べてきたように、電力・原発の分野では、やらなければならない課題が山積みだ。先週(3日)の内閣改造にあたって、記者会見で「経済が最優先」と述べた安倍首相の発言が掛け値なしの本音の言葉なら、供給不安がなく、少しでも廉価な電力の確保は、重要なテーマである。これまでのような有耶無耶の再作対応では決して済まされない。これこそ、将来を嘱望される小渕大臣の腕の見せ所ではないだろうか。小渕優子
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