2014年10月16日木曜日
東北楽天イーグルス一軍打撃コーチ、“デーブ”こと大久保博元「信じないと人は育たない」
東北楽天イーグルス一軍打撃コーチ、“デーブ”こと大久保博元「信じないと人は育たない」
東北楽天ゴールデンイーグルスの一軍打撃コーチに就任した、“デーブ”こと大久保博元氏。西武時代はアーリーワーク(早朝練習)などアイデアに富んだ指導法で強力打線を育て上げ、2008年日本一に貢献した手腕は球界でも高い評価を受けている。大久保博元
闘将・星野仙一監督から「思うようにやってくれ」と絶大な信頼を受けるデーブ流コーチング論とは?
「いろいろとあったので、こんなに早く声をかけていただけるとは思ってもなかったです。長年の夢だったラーメン店を、自分なりに勉強を重ねて、ちょうど10月の末にオープンさせたばかりでしたからね(笑)。
早速、秋季キャンプに参加させてもらったんですけど、星野監督からは『思うようにやってくれ』って言われてますし、これで来季、楽天が打てなかったら100パーセント自分の責任です」
―今季はチーム打率.245、ホームラン53本(ともにリーグ5位)と、決して強力とはいえない楽天打線ですが、秋季キャンプではかなりの手応えを得られたようですね。
「『西武と比べてどうですか』とよく聞かれるんですが、僕のモットーとしてほかのチームと比べることはしません。巨人のとき、『V9時代は、ああだった、こうだった』みたいなことをコーチから言われて、“そんなの俺たちには関係ねーよ”って思ってましたからね。だけど、楽天の選手たちは世間の評価とは違って初日のアーリーワークから振れていて驚かされたんです。最初、トスバッティング200球×3箱が限界かと思っていたら、初日からそれを軽々こなしてしまった。だから翌日からは200球×5箱がノルマになり、最後の10日間はそれが300球×5箱になった。一般のファンの方はわからないかもしれませんが、1500回振るっていうのはトンデモナイことなんですよ」
―振って振って振り込ませるのがデーブ流ですが、これにはどのような理由が?
「運動生理学的には、人間、体に力が入ってるうちは、いい形を体が覚えないんです。だから徹底的に疲れさせて余分な力が入らなくなったとき、初めていいフォームを体が覚える。その意味で、かつては“根性論”と思われていた千本ノックにも実は意味があったということが今では立証されているわけです」
―そうしたデーブ流指導に早くも対応している楽天の選手たちの能力は高い、と。
「楽天に限らず、プロに入ってくる選手はみんな野球の天才ですよ。結果が出ないのは、たまたま数をやれる体力がないとか、数はやっているけど間違った方向にいってるかだと思うんです。そういうのをひとつひとつ解きほぐしてあげるのがコーチの役目なんだから、選手は悩まず思いっ切りやればいい。よく『アイツはダメだ』って言うコーチがいますけど、ダメにしてるのはコーチなんじゃないの?って僕は思いますね」大久保博元
―現役時代に身をもって感じたコーチたちの理不尽さみたいなものも、反面教師としてデーブさんのコーチングに影響を与えているのでしょうか?
「それはありますね。やっぱり言っていることがいつも違うコーチや、自分で責任を取らないコーチは選手も絶対に信用しない。現役時代、あるコーチが僕に『長いバットを使ってみろ』って言うので発注して、代打で出たときに初めて使ったんです。確か西宮球場で初球をバーン!って振ったらサードフライで。それを見た監督に『バットが長いんじゃないか』って注意されたんですけど、勧めたコーチも一緒になって『おまえ、長いぞ!』と怒ってきて(苦笑)。だから『わかりました』って言って、その場でバット捨ててやりましたよ(笑)。そんな筋の通らないこと言われたら子供でもグレますよね」
―そんな理不尽なコーチとあたっても、デーブさんは、「人のせいにするな、嘘をつくな、言い訳をするな」と選手たちに指導されているとか。
「僕がそれ、全部やってたんで(苦笑)。使ってもらえないのを人のせいにして、言い訳して、嘘ついて。その間、ずっと二軍暮らしでした。でも、やっぱり人の評価は正しいんだ、自分の努力が足りないんだと考えられるようになったら、ジャイアンツに声をかけてもらえて。だから、そこは実体験として選手に話しています」
―逆に印象に残っている、いいコーチはどなたですか?
「新人のときにお世話になった土井正博さんですね。入団1年目で二軍の4番を任されたんですけど、ケガもあって全然打てなかったんです。僕も18歳でしたし、『もう代えてください』って弱音を吐いたら、『俺はおまえを4番から外さない。外したら普通の選手以下で終わるぞ。どっちを選ぶんだ』って叱責(しっせき)されたんです。その後もあまり打てなかったんですけど、打てないことに関しては何も文句は言われませんでしたね」大久保博元
―デーブさんのことを信じて使い続けたんですね。
「ええ。でも、その土井さんから一度だけ怒られたのは、二軍の試合の1打席目で、中途半端なスイングで初球をゴロにしてしまったとき。ヒットを打てなかったことではなく、きちんと振らなかったことと、打席に入る準備ができていなかったことを猛烈に怒られました。『すぐに荷物まとめろ!』と言われ、そのまま土井さんの車で所沢に帰され、マンツーマンで7時間もマシンを打たされたんです。で、ヘロヘロになって宿舎の部屋でぶっ倒れてたら、『何しとんじゃ! やるだけやったら遊びにいかんかい!』って。『いや、門限過ぎてます』って言ったら『関係あるか。次、見回りに来たときに部屋におったら罰金取るぞ!』って(笑)」
―いいコーチですね。
「責任持ってくれる人でしたよね。やっぱり信じないと人は育たないんですよ。絶対できると期待をかければ、人はそれに応えようとする。ピグマリオン効果といって教育心理学でもそれは証明されているんですよ」
―楽天でも選手をとことん信じて信頼関係をつくっていくわけですね。
「選手って、男と付き合い始めた女のコに似ているんですよ。フラれるのがイヤで、みんな一生懸命。そういった心理をいかにくみ取るかもコーチの大事な仕事だと思います」大久保博元
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