2014年10月18日土曜日
女優 山田真歩 名前通り、真っすぐ歩む
女優 山田真歩 名前通り、真っすぐ歩む
独特の存在感とちょっと不思議なかおりがする女優・山田真歩さん。最新の出演作は2012年5月公開の映画『レンタネコ』。自分の存在意義に疑問を感じながら、寂しい日々を送るレンタカー屋の受付嬢を好演している。山田真歩
「彼女は、自分の仕事は自分でなくてもいい仕事だと思っているから、たまにお客さんが来ても平気で他のことを考えていたりする。あるいは車のランク分けを毎日眺めながら、自分はCランクだと思っていたりする。でもそういう中途半端な感じってすごくよく分かります。私もそういう時期が長かったから」
大学の教育学部へ進学した山田さんは、そのまま両親のように教師になるつもりだった。だが、隣接する大学の演劇サークルに入ったことで運命の歯車は大きくずれる。「とにかくいろんな人がいて刺激的で、何より演じるのが楽しくてたまらなかった。これだ!と思いました。毎日スキップしながら稽古に通っていましたね」
大学3年になって周りが就職活動を始めた。夢のような演劇の日々にいた山田さんに突如現実が襲いかかってくる。山田真歩
「将来を考えると憂鬱(ゆううつ)で悶々(もんもん)とするばかり。それで一人でドイツに行くことにしました。なぜドイツかって? 特に理由はないです(笑)。ここじゃないどこかに行けば、何かが変わるんじゃないかと思ったんだと思います」
1カ月間ドイツで一人暮らしをしてみた。分かったのは「どこへ行っても画期的に何かが変わるということはないんだな」ということだった。
「ただ、旅行中にふと自分の名前のことを考えたんです。両親はおそらく『真実に向かって歩む子』にしたかったのかもしれない。でも、もしかしたら、真っすぐに好きなことへ向かって歩めということかもしれないと思えてきて、だったらそうしようかなと」
一番好きなことは何かと考えた時、すぐに思い浮かんだのはやはり演劇だった。
「だから教職を目指すのはやめ、卒業後は就職せずにアルバイトを始めました。演劇がやりたかったので基礎を学ぼうと、劇団東京乾電池の養成所に研究生として入りました」
ところが、いつかなうかも分からない夢を追いかけながらのバイト生活は、想像以上に耐え難いものがあった。「学生の時は、何だかんだと学校という組織に守られていたんだと思います。それが『さあ、自由だよ』となった時、一気に不安が襲ってきた。それで一度就職しようと養成所をやめました」
そして入社したのは、社員5人ほどの小さな出版社だった。
いったん演劇から離れ、出版社に勤め始めた山田真歩さん。
「担当した書籍の仕事は、原稿執筆から編集、装丁まで全部任せてもらえました。やりがいはあったし、楽しかった。それでも、学生時代の演劇サークルほどはのめり込むことができませんでした」
ある時、会心の作だと思えるような本が出来上がった。ところがある人に「こんなのが売れるの?」と言われた。その言葉に傷つき落ち込んだが、同時にそんなには悲しんでいない自分にも気がついた。
「演劇だと、うれしいとくやしいの差がもっと激しい。この時、私が本当に夢中になれるのは演劇なんだ、と改めて確信したんです」。その頃から、朝早く出社して誰もいないオフィスで発声練習をしたり、図書館で借りてきた戯曲を読んだりして一人でできる演劇の勉強を少しずつ始めた。
そんな矢先、大学時代の演劇サークルの仲間から自主映画を撮るので出てほしいと依頼がくる。映画は初めてだったが「何でもいいからやる!」と引き受け、ゴールデンウイークの休みを利用して撮影に参加。「演技をするのは3年ぶりで、夢のような5日間でした」山田真歩
それが映画『人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女』。作品は1日だけ池袋の映画館で上映されることになり、100人ほどが観に来てくれた。その時観客の一人だった入江悠監督との出会いが縁で、山田さんはのちに入江さんの監督作品『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』に出演。主役に抜擢(ばってき)されたのである。
「私の経歴って本当にガチャガチャですよね」と笑う山田さん。確かに就職で悩みドイツまで行ったり、演劇をやろうと決めたのに再び悩んで就職したり。「でも、全部が糧になっていると思う。結局は自分の選んだことが、そのまま自分の人生になっていくんだなと実感しています」
今は、さすがに迷いはない。一生女優を続けていく覚悟だ。
「作品に没頭し、自分を枠にはめたりせず、自由にのびのびと芝居をしていきたいです。ただ、感情の起伏があり過ぎるのが私の欠点。自分の中にいろんな人格があるんです。人に対しても心を開いたり閉じたり、その繰り返し。でも徐々に開きつつあるかな。とにかくもっと心のキャパシティーを大きくして、いろんなものを受け入れられる自分になりたい」
とことん正直。「ついつい考え過ぎる」ゆえ、立ち止まってしまうことも多いという。でもそんな時は、「とりあえず踊ったり、人に会ったりして心のバランスを取ることにしている」とか。何だか愉快。楽しい女優の誕生だ。山田真歩
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